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小水力とメガソーラー発電所視察会 (関東支部 加藤 滋)2013/5/23

池袋駅前から大型バス満杯の参加者を乗せて一路山梨県に向け出発、約2時間で最初の視察地である都留市に到着しました。

まず都留ミュージアムで、当地「谷村」の歴史とともに、9月1日に行われる八朔祭の屋台に飾り付けられ、葛飾北斎ら有名な浮世絵師の手による豪華絢爛たる飾り幕(写真1)を拝見したあと、都留市役所の河野様と権守様の説明を受けながら、3種類の発電機が設置されている小水力発電所を視察しました。これらの発電所は、家中川の上流から「元気くん1号」「元気くん3号」「元気くん2号」と命名され、市民出資の公募債「つるのおんがえし債」(5年満期一括償還)を発行し、市民参加型の発電所として運営されていました。

いよいよ、都留ミュージアムを出発し、小学生の「こんにちは~」とうい元気な声に迎えられて、都留市役所と谷村第一小学校との落差を利用した「元気くん1号」に到着しました。


[写真1]

[写真2]

[写真3]

「元気くん1号」(写真2)は、22kWの同期発電機を備えた、木製の「開放型下掛け水車」を採用し、除塵装置はあるものの、川から流れ込むゴミによってブレードの先端が損傷しても、専門家へ依頼せずに修理ができるような構造になっていると説明がありました。すでに市役所の職員の方が修理を行った実績があるそうです。

校庭を出て生活道路を校舎裏へと回り込むと、小学校の校舎下を流れた川が、最大出力7.3kWの誘導発電機を備えた「開放型らせん水車」「元気くん3号」(写真3)を回していました。この水車は、電柱を建てる穴を掘る、オーガーを斜めに倒したような形状で、このような形でも発電ができることに驚きを感じました。


[写真4]

水流が勢いを増してきた川に沿って下って行くと、頭から水をかぶって勢い良く回っている「開放型上掛け水車」の「元気くん2号」(写真4)に到着します。最大出力19kWの誘導発電機を備えていますが、元気くん1号と比べると水車はいたってコンパクト。その秘密は有効落差にありました。元気くん1号の2倍近い3.5mもの落差を有効に利用していたんですね。その分騒音の問題が発生するため、アクリル板などを活用して、対策を施しているとお聞きしました。

これら3台の発電機で発生した電力は、発電機の近くでAC/DCコンバータとDC/ACインバータを通し、市役所のキュービクルに集線して系統連系し、市役所、エコハウス、植物栽培施設の78%もの電力を賄っています。休祭日には市役所の電気使用量が少ないため、余剰電力として系統へ逆潮流させ、環境にやさしい電気を、街の人たちに使ってもらっているそうです。(もちろん逆潮流分は電力会社に買取りしてもらっています)


また、市役所では緑のカーテンなどを設置(写真5)して、冷房負荷を極力減らす取り組みをしていたり、隣接するエコハウス(写真6)では、12もの省エネ対策要素を取り込んで、来場する方々に体感してもらいながら「エコライフスタイル」を提案できるように工夫されていました。建物の中を流れる風と自然光の取り入れ方の工夫は、とても参考になりました。

川口湖畔での昼食後、甲府市の山間にある「米倉山太陽光発電所」に向かいました。ここでは、「CIS薄膜化合物」の太陽光パネルを使用し、構内の分散した大小11のサイトに合計出力10MWのパネルが設置され、年間発電電力量1,200万kWhの電力を生み出します。見学では「ゆめソーラー館やまなし」での説明と、展望台に登ってサイト全体を見渡しながら、さまざまな疑問にお答えいただきました。当サイトのパネルは、ほとんど真上を仰ぎ見ているような角度になっています(写真7)。


[写真5]

[写真6]

[写真7]

その理由は、パネルの陰になる部分を減らし、パネルの枚数を増やすために10度の角度で設置したからです。さらに、基礎打ちをせずに基礎コンを地面に直置きし(写真8)、工期の短縮をはかったことが紹介されました。

ただし、見学者から質問も出ていましたが、カラスの糞や土埃などが雨によって洗浄できるのか、10度という角度での検証はこれからのようで、その結果にも興味を持っていきたいと思います。


発電された電気は、それぞれのサイトに設置されているインバータで6,600Vの交流に変換され、数回線の配電線でサイト専用の変電所に送られます。そこで66kVに昇圧して、電力系統に連系されているとお聞きしました。

ちなみに、当サイトでは、太陽光発電機のほかに、展望台まで登る途中に水力発電用の溜池があり、PR館との落差を利用した発電機が設置されていました。加えて、太陽光で発電した直流の電気で水を電気分解し、発生した水素を貯蔵した上で、必要な時に電気として取り出す燃料電池。さらに、リチウムイオン電池や電気二重層コンデンサなどの蓄電装置も設備され、系統からの電力に頼らず自立して電力を賄うことができるような設備が整っていました。


メガソーラーのサイトをあとにして、いよいよ最後の視察地である「マンズワイン勝沼ワイナリー」に到着。堂々たる風格の我が日電協関東支部山梨地区の副会長にお出迎えいただき、工場見学を実施しました。映像でワイン醸造の基本やマンズワインの説明を受けた後、工場内の見学に出発。醸造タンク(写真10)などは雑味が入らないよう、タンクの内側がミラーリング(ガラスコーティング)されていることを知りました。また、勝沼ワイナリーでは低価格の料理用ワインの製造もおこなっており、海外産の濃縮葡萄ジュースやワインとして輸入したものをブレンドして製造していることを堂々と説明されていました。隠蔽することのない自分たちが製造する製品に対する自信と風格を感じました。-4℃に冷却する「おり」を除去する工程での省エネのご苦労も伺いました。


[写真8]

[写真10]
お待ちかねの試飲コーナーでは、好みのワインを試飲しながらほろ酔い加減の方々も・・・。最後に副会長からお土産をいただき、帰宅の途に。怪我もなく池袋へ無事に到着することができました。事務局の皆さんお疲れさまでした。
(小出力発電所の写真は9月号の表紙に使用されました)